
このクマさんが私を監視してたの!?私の日常を返して!
問 神奈川県内の黄天大学法学部に通うX(20歳)は、同大学の弁論サークルで知り合ったY(20歳)との交際期間中、自ら所有するスマートフォンにインストールしたアプリケーション(以下、「本件アプリ」という。)によって、Yに自身の位置情報を共有していた。その後、Xがつくった味噌汁の味付けをめぐり口論となり、ほどなくして2人は破局した。Xは、Yに別れを告げた日の夜、本件アプリをアンインストールしたが、交際期間中にYからプレゼントされたクマの形をしたスマートフォン用ストラップ(以下、「本件ストラップ」という。)については、破局後もYに返還せずそのまま使用し続けていた。ところが、Yとの破局後も、Xが行く先々に決まってYが姿を現して、しつこく復縁を迫り続けたことから、Xは何者かによる監視の疑いを抱き、管轄警察署の生活安全課の強面警察官Aに一連の経緯を相談した。
この事案に関する以下の記述のうち、ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下、「ストーカー規制法」という。)の規定に照らし、正しいものはどれか。
1 警察本部長等が警告を発するためには、相談者が、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等により、その身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えていることを、警察官との対面により確認する必要がある。したがって、警察本部長等に対する警告の申出は相談者自ら行う必要があり、その親権者や弁護士等が警告申出書の作成や提出を代理することはできない。
2 都道府県公安委員会は、Yによる位置情報無承諾取得によって、Xがその身体の安全が害されるのではないかとの不安を覚えていると判断した場合において、Yが更に位置情報無承諾取得等を繰り返すおそれがあると認めたときは、Yに対して禁止命令を発することができるほか、既にYが取得しているXの住所・連絡先の記録等の廃棄を命じることもできる。
3 YがXとの交際期間中に、密かにXの位置情報を記録・送信する機能を有する機器を本件ストラップの内部に埋め込んでいた場合、交際当初に本件アプリによる位置情報の共有について合意があった以上、その後の関係悪化によりXが共有の拒絶に転じたとしても、YによるXの位置情報の把握の継続がストーカー規制法上の「ストーカー行為」に該当することはない。
4 肢3の場合において、Yによる監視を疑ったXがYに電話で問い合わせたところ、Yは勝ち誇ったように、本件ストラップ内部に仕掛けた位置情報記録・送信機器の存在をXに明かした。本件ストラップを直ちに破棄したXは、Yに対して、「もう私の前に現れないで!電話もかけてこないで!」と明確に拒絶の意思を示して電話を切った。この場合であっても、Xが運営しているブログに対するコメントの投稿については言及がないことから、Yがコメント欄に復縁を求めるメッセージを大量に投稿しても「ストーカー行為」に該当することはない。
5 肢3の場合において、Aからの指摘によりXが本件ストラップを破棄したため、Yは本件ストラップによる位置情報の取得ができなくなったとする。そこで、Yは、Xの自宅から徒歩2分の場所にある駐車場に停めてあるXの所有する自動車に、密かに位置情報記録送信機能を有する機器を取り付けた。この場合、たとえYが在宅中であっても、自宅から徒歩2分の距離がある駐車場に駐車中の自動車を所持しているとはいえないことから、Yによる機器の取り付け行為が「ストーカー行為」に該当することはない。