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【司会業向け】フリーランス法で守るフリーアナウンサーの権利|「業界の常識」はもう通用しない!【2024年11月施行】

2025-12-25

1 フリーアナウンサーを襲うハラスメントと「タダ働き」の罠

問 司会業を営むフリーアナウンサーA(従業員を使用していないものとする。)が、従業員100名を抱えるイベント企画運営会社Bから、Bが主催するブライダルイベントの司会業務を、期間を6ヵ月として依頼された場合(以下、「本件委託」という。)に関する以下の記述のうち、特定受託事業者の取引の適正化等に関する法律(以下、「フリーランス法」という。)に照らし正しいものはどれか。

1 Bの役員Cは、打ち合わせ後の会食において、Aに対し、業務とは関係のない性的な質問を執拗に繰り返した。Aが不快感を示したところ、Cは「この業界でやっていきたいなら、これくらいのノリは必要だ」と発言した。Bは社内の役員・従業員に対してはハラスメント研修を行っているが、Aは社外のフリーランスであるため、相談窓口の周知その他のハラスメント防止のための体制整備の対象にAを含める必要はない。
2 本件委託の期間中、急遽、Bにおいて接待ゴルフの表彰式の司会者の確保が必要になった。Bの外注担当者Dは、Aに対し、「B社との取引関係の継続を考慮してほしい」と示唆したうえで、当初の委託内容には含まれていない当該表彰式の司会を、追加報酬を一切支払うことなくAに担当させた。Bの行為は、フリーランス法が禁ずる不当な経済上の利益の提供要請に該当し得る。
3 AはBの役員Eから受けた性加害について、厚生労働大臣に対して被害を申し出た。これを知ったBは、Aのスキルに何ら問題がないにもかかわらず、「行政に通報するような人間とは信頼関係を維持できない」と主張して、本件委託を即時解除した。Aの気持ちはわかるが、Bによる契約解除は私的自治の範囲内であり、フリーランス法に抵触しない。
4 本件委託は期間が6ヵ月であるため、BがAを雇止めにしたり中途解約しようとする場合、原則として、少なくとも30日前までに予告しなければならないが、予告期間さえ守れば、AがBの役員Fからのハラスメントに抗議したことを理由に解約する場合であっても、Bは法的な責任を問われない。
5 本件委託の際にBがAに交付した業務委託契約書には、報酬額と支払期日に加えてBの役員Gの電話番号が明示されていたが、業務延長時の追加報酬についての記載がなかった。この場合、Aが司会を担当したブライダルイベントが予定より2時間延長したとしても、AはBに対して延長分の追加報酬を請求することはできず、Gとの個人的関係において報酬を得るほかない。

2 釣り広告は許さない!募集情報の的確表示義務をクイズで攻略!

問 従業員300名を抱えるイベント企画運営会社Bが、自ら運営する夏季限定の海の家・アジュール江の島のプロモーションや現場運営に必要な人材の募集を、マッチングプラットフォーム事業者Cに依頼した場合(以下、「本件募集」という。)に関する以下の記述のうち、特定受託事業者の取引の適正化等に関する法律(以下、「フリーランス法」という。)に照らし正しいものはどれか。

1 Bは当初、Cに「海の家でのイベント司会 日給3万円」という条件で募集を出稿していたが、数日後、採算性を考慮して日給2万円に変更した。BはCに対して募集情報の変更を依頼していない。その後、フリーアナウンサーA(従業員を使用していないものとする。)が本件募集に応募したが、面接の場ではじめて日給が2万円に変更されていたことを知った。この場合、マッチング事業者Cは本件募集につき的確表示義務を負わず、また、Bも面接の時点での日給の金額を嘘偽りなく伝えているのであるから、Bにも的確表示義務違反は認められない。
2 肢1の場合において、Cが従前の内容のまま募集を継続していることを容易に認識し得るBとしては、Cに対して日給の表示の変更を依頼したうえで、募集情報が最新のものに更新されていることを自ら確認しなければならず、Bがこれを怠れば的確表示義務違反となる。また、BがCに対して日給の表示の変更を繰り返し依頼したにもかかわらず、Cが表示の変更に応じなかったときも、募集にあたり、そのようなマッチング事業者を自らの意思で選定した以上、Bは的確表示義務違反の責任を免れない。
3 フリーランス法が特定業務委託事業者に募集情報の的確表示義務を負わせる目的は、募集広告等と実際の取引条件の内容に齟齬があれば、取引条件をめぐり紛争に発展し、フリーランス個人の能力活用の機会が失われかねないため、これを未然に防止することにある。したがって、Bが出稿した司会者募集広告に対し、フリーアナウンサーを多数抱える法人たる事務所Dが応募したときは、Bは的確表示義務を負わない。
4 特定業務委託事業者の的確表示義務は、1対1の個別の契約交渉の前段階の、広く不特定多数人に対してフリーランスの募集に関する情報を提供する場面で生じるものである。したがって、これまでBの役員・従業員らが名刺交換した多数のフリーランスのメールアドレスに対し、BCC設定を用いて募集メールを一斉送信しても、従前からの関係性に基づく個別の通信にすぎないため、Bは的確表示義務を負わない。
5 BはCに対して、海の家のキッチンスタッフの募集広告も出稿していたが、本件募集とは別個に、海の家を共同で運営していくためのパートナー企業(資本金1億円以上の法人に限る。)の募集広告も地元紙に出稿していた。Bは、フリーランスとの業務委託契約の締結を目的としないパートナー企業の募集広告については的確表示義務を負わない。

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