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フリーランス法上のパワーハラスメントとは?ブラックな発注者・第三者からクリエイティブの要を守るための実務知識【2024年11月施行】

1 映像クリエイターを経済的パワハラから守るためのフリーランス法実務知識!

問 映像制作業を営むA(従業員を使用していないものとする。)は、広告代理店B社(従業員500名を使用しているものとする。)から、B社のクライアントである大手飲料メーカーD社の新商品プロモーション動画の制作ディレクション業務を、報酬総額150万円、納期6ヵ月の条件で依頼された(以下「本件委託」という。)。
本件委託の遂行中、B社の担当プロデューサーCは、Aに対し、連日深夜に至るまでSlackや電話で連絡を繰り返し、Aが休息のために返信を数時間遅らせただけで「プロ失格だ!」、「B社と2度と仕事ができなくなってもいいのか!」等と怒鳴り散らした。また、D社の宣伝部長Eも、AとB社の打ち合わせに同席した際、Aに対し「クリエイターなら24時間死ぬ気で考えろ!」と罵倒し、Aの自宅の作業部屋の様子をビデオ通話で常に映し出し、監視状態に置くよう強要した。
さらに、Cは本件動画の検収にあたり、明確な修正基準を示さないまま「熱量が足りないんだよ!」といった抽象的な理由で10回以上に及ぶ作り直しを命じ、最終的には、Aへの報酬支払いも一方的に拒絶した。
この事案におけるB社の対応に関する以下の記述のうち、フリーランス法に照らし、正しいものはどれか。

1 本件委託において、B社は自社の従業員であるCの言動についてはパワーハラスメント防止のための措置義務を負うが、社外の第三者であるEの言動についてまで措置義務を負うことはない。したがって、Eによる罵倒や監視の強要については、B社との関係でフリーランス法上何らの問題も生じない。
2 Cの各言動が業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであるかを判断するにあたっては、当該言動の目的、当該言動が行われた経緯や状況等を総合的に考慮するが、本問ではこれらに加えて、Aが受けた精神的・身体的苦痛の程度、B社の当期純利益やAの過去の納税状況といった要素も総合考慮における重要な要素となる。
3 Aの就業環境が害されたかどうかは、平均的なフリーランスの感じ方を基準として判断される。本問のAと同様の状況におかれた平均的なフリーランスであれば、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるであろうから、本問のCの言動はパワーハラスメントに該当する。
4 Cが明確な検収基準を示すことなく嫌がらせのために何度も全編の作り直しを強要したことは個の侵害として、また、Aの自宅での作業風景を継続的にWebカメラで監視し、プライバシーを侵害したことは過大な要求として、いずれもフリーランス法上のパワーハラスメントの典型例といえる。
5 本問において、B社が正当な理由なくAに対する150万円の支払いを拒絶した場合、B社は労働基準監督署から、労働基準法第24条の全額払いの原則に違反することを理由として是正勧告を受ける可能性があるほか、同法に基づく罰則の適用もあり得る。

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