
先生のイジワル! どの参考書にも書いてないよ!
問 次の文章は、とある宅地建物取引士の登記簿権利部乙区の担保権の記載についての理解を要約したものである(以下、「本問要約」という。)。後記アからオまでの記述のうち、本問要約と矛盾するものとして正しいものはどれか。
「登記簿には表題部と権利部があり、権利部は所有権に関する甲区と所有権以外の権利に関する乙区に分かれる。権利部乙区に抵当権や根抵当権の記載がある場合(以下、「抵当権等」という。)、当該抵当権等が実行されれば、入居者が退去を迫られることにもなりかねないことから、居住用不動産の賃貸借契約を媒介する宅地建物取引業者としては、賃貸目的物に抵当権等が設定されている旨、重要事項説明の場で入居者に対して丁寧かつわかりやすく説明しなければならない(宅地建物取引業法35条1項1号参照)。
しかしながら、およそリスクというものは正当に評価すべきものであって、わずかなリスクを拾いあげて徒に入居者の不安を煽るようなことはあってはならない。サブリースにおいては、収益物件を建てようとしている将来のオーナーは、通常、金融機関から融資を受けて集合住宅を建てるのであり、その際、完成建物には金融機関の抵当権等が設定されることになる。つまり、築浅の集合住宅であれば、多くの場合、完成建物に対する金融機関の抵当権等が存在しているのである。オーナーとしては、抵当権等が設定された状態で収益物件を運用し、賃料収入から被担保債権の弁済を継続することによってその完済を目指しているところである。しかも、オーナーは金融機関から融資を受ける際、厳しい審査を経て返済計画の合理性を一応認められているのであるから、少なくとも、築浅物件については、抵当権等が設定されていることをもって将来の明渡しリスクを騒ぎ立てるべきではなかろう。
また、オーナーや金融機関が予測し得なかった経済情勢の変動その他の事情により、オーナーによる被担保債権の支払いが困難となった場合であっても、直ちに抵当権等が実行されることは稀であり、多くの場合、任意売却、すなわち、オーナーが当該収益物件を競売以外の方法で第三者に売却することによって返済原資とする。そして、当該収益物件についてオーナーチェンジが生じた場合、所有権の移転に伴い賃貸人たる地位も所有権の譲受人に移転するわけであるから(民法605条の2 1項)、賃借人は新たな賃貸人に対して賃料を支払うことによって居住を継続することができる。換言すれば、権利部乙区に抵当権等の記載はあるが、賃借人が退去を求められることはない。
さらに、オーナーチェンジが行われることなく抵当権の実行に至ってしまった場合であっても、かかる収益物件の競売に入札する者としては、利回りその他の条件を踏まえたうえで、引続き収益物件として運用する前提で入札に参加するものも相当数含まれているであろう。そうであれば、たとえ抵当権等が実行され、賃借人がその利用権を競落人に対抗し得ない場合であっても、契約内容の優劣はともかくとして、収益化を意図する競落人との間で新たに賃貸借契約を締結し直すことによって居住を継続できる場合もあろう。また、たとえ競落人が自ら使用収益することを望んだとしても、賃借人は6ヵ月間の明渡し猶予制度(民法395条1項)の適用を受けるのであるから、賃借人が別の居住用物件の賃貸借契約を締結するための時間的余裕は、高齢者や生活保護受給者等を除き、相当程度確保されているといえよう。つまり、抵当権等が実行された場合であっても、賃借人の退去リスクは、制度上も実際上も相当程度限定されているといえよう。
以上を踏まえれば、重要事項説明の実務に携わる宅地建物取引士としては、登記簿の権利部乙区に抵当権等の記載があることのみをもって入居者の不安を煽るべきではなく、あくまでも、入居者様の予測可能性に資するという観点からご説明差し上げているのだというスタンスで重要事項説明に臨むべきであろう。」
ア 本要約は、収益物件の登記簿権利部乙区の記載をめぐる宅地建物取引士の役割について、当該収益物件について新たに所有者となった者と当該収益物件の従前からの入居者の間の利害調整という観点から論じたものである。
イ 金融機関Aから融資を受けて収益物件を建てたオーナーBが、財産状況の悪化を踏まえ、当該収益物件の任意売却を決断し、Cが当該収益物件を買い受けた場合、当該収益物件の従前からの入居者DがBに差し入れていた敷金をめぐる法律関係は、買受人たるCに承継される。
ウ 金融機関Aから融資を受けて収益物件を建てたオーナーBが、財産状況の悪化を踏まえ、当該収益物件の任意売却を決断し、Cが当該収益物件を買い受けた場合において、Cが当該収益物件の従前からの入居者Dに対して賃貸人たる地位に基づく主張をするためには、当該収益物件について所有権の登記を具備する必要がある。
エ 金融機関Aから融資を受けて収益物件を建てたオーナーBの財産状況が極度に悪化したため、金融機関Aが当該収益物件について設定を受けていた抵当権を実行した結果、Eが競落した場合、当該収益物件の従前からの入居者Dが希望すれば、競落人Eとの間で新たに賃貸借契約を締結し直すことが可能であるから、Eから退去を求められることはない。
オ 金融機関Aから融資を受けて収益物件を建てたオーナーBの財産状況が極度に悪化したため、金融機関Aが当該収益物件について設定を受けていた抵当権を実行した結果、Eが競落した場合において、Eが当該収益物件の従前からの入居者Dに対して退去を求めたときは、DはEに対して6ヵ月間の明渡しの猶予を主張することができる。
1 オ
2 エ
3 ウ
4 イ
5 ア