
先生のイジワル! かわいいからって、旅させすぎでしょ!
問 次の文章は、宅地建物取引業者Aでの重要事項説明を終えて、特定行政書士Sの事務所にようやく帰れた秘書Hが、寝坊して夕方にノコノコ現れたSを見てギャン泣きした後、SがHの話を踏まえて法的な説明をしている場面を何者かが文字起こししたものである。文章中の(ア)から(オ)までの( )内に、下記AからEまでの文のうちから適切なものを選んで入れると、居住用不動産の賃貸借契約における実務慣行に関するまとまった論述になる。(ア)から(オ)内に入れるべき文の組合せとして正しいものは、後記1から5までのうちどれか。
寝坊したSが事務所のドアを開けると、そこには疲れ果てて椅子に座り込むHの姿があった。
S:おはよ♪ 重説どうだった?
Sの声を聞いた途端、Hの目にはみるみるうちに涙がたまっていき、ついに大声で泣き出した。
S:こら、泣くな、きったねぇ。どうしたんだよ♪
H:先生のバカバカバカ! どうしてそんなに嬉しそうなの! あの宅建士さん、ウェ~イとか無敵とか、もうメチャクチャなんです!
S:わかった、わかった。何があったのか聞かせて?
H:えっと……マンションに根抵当権がついてて、いつまで住み続けられるかワクワクドキドキとか……先生の事務所を辞めたら、横浜で6ヵ月間遊んでねとか……退去する時に原状回復費用がかかるかもとか……あと、銀行口座の登録もさせられちゃいました…どうしよう……。
S:なるほど、あんにゃろ。……よし、まずは書類を整理しよっか。持って帰ってきた書類、ぜんぶ出して。
H:…ひっく…はい…ひっく…。
Hはハンドバッグからクリアファイルを取り出してSに手渡した。Sが書類をひろげると、以下の書類が確認できた。
①重要事項説明書
②賃貸借契約書
③特約・特記事項というタイトルの書面
④保証委託契約書
⑤ラビング補償制度に関する書面
⑥QRコードが掲載されている設備確認用書面
⑦入居者用アプリの新規会員登録案内
⑧AIチャットボット案内
⑨ライフライン連絡先案内
⑩ゴミ出し案内
⑪インボイス確認書
⑫管理会社請求書
加えて、Hのポッケからは、クシャクシャになった⑬WEB口座登録案内と⑭QRコードが掲載された入居者案内がでてきた。
S:まず、(ア)。ほら、Hさん、④保証委託契約書、ちゃんと持って帰ってきてるじゃん? スマホからQRを読み込んで⑬口座登録もしたんでしょ? なら、平常運転だから心配しなくていいよ。火災保険にはちゃんと入れた?
H:火災保険の話なんて聞いてないです! どうしよう…。
S:ちょっと待ってね……あれ? あ、そっか。(イ)。これも平常運転だから心配しなくて大丈夫だよ。ところで、宅建士は月額保証料の話をしてた?
H:……聞いてません…ひっく。
S: 聞いてないの? ……むむむ……以前は連帯保証人をたてる必要があったけど、今では保証会社の利用で代替するケースがほとんどだ。(ウ)。今回のHさんの契約は後者みたいだから、本来、毎月の家賃とは別に、この金額が月額保証料等として引き落とされるという説明も必要なはずなんだけどね。
H:……敷金がないことしか気づきませんでした…。
S:それじゃ、ヤマ場の原状回復義務について見ていこうか。物件を居住用途で一定期間使えば、誰が入居者であっても、ある程度は汚くなったり調子が悪くなったりするよね。これを、通常の使用による損耗の範囲内の通常損耗・経年変化っていうんだけど、この部分についてはオーナーさんとしても予測がたつから、あらかじめ、その修理費用を月額賃料に上乗せしておくことも可能だ。実際、可能かはともかくとして、理屈としてはそういう説明が成り立つ。
H:あ! 宅建士さんが現状ナントカガイドナントカって言ってました!
S:国土交通省の原状回復ガイドラインのことかな? 今言った通常損耗・経年変化の話も含めて、私の話はこのガイドラインの内容そのものだよ。あなたも、notebookLMの援助を受けながら少しずつ理解していってね。これに対して、普通はこんな酷い損耗は生じない、当該あなたが入居者だったせいでこうなってしまったっていう場合は、通常の使用による損耗の範囲外の損害について、賃借人に損害賠償義務が発生する。これを、原状回復義務というんだ。
H:通常の使用による損耗の範囲内かどうかで、賃貸人の負担になるか、わたしの負担になるかが決まるってことですか?
S:うん、そうだよ。たとえば、夕方になると西日がさしてくる部屋だったとするよね? 床にカーペットを敷いていたらどうなる? 時間が経てば、カーペットに隠れていない部分の床が日焼けしてくるよね。でも、それって、誰が入居者だろうが同じことだよね? だから、通常の使用による損耗の範囲内の経年変化として、オーナーさんが負担すべき部分ってことになるんだよ。
H:そういう意味だったんですね! だんだんわかってきました!
S:では、(エ)。
H:えっと…喫煙者の割合が下がってきている状況下で、相変わらず紙タバコを吸っている人が入居したことで生じた損害は、誰が入居しても発生していた損害ではなく、この人が入居者だったからこそ発生した損害ですよね。あと、エアコンからの水漏れに気づいたら、普通はすぐに修理をお願いして壁に被害が及ばないようにしますよね。それなのに、グズグズしていたせいで壁がカビだらけになってしまったのであれば、この人が入居者だったからこそ発生した損害ですよね。ということは、両方とも、通常の使用による損耗の範囲外の損害として、入居者が原状回復義務を負うことになりそうですね!
S:うん、そうだね。そのあたりも原状回復ガイドラインに書いてあるけど、お客さんは忙しくて役所のガイドラインをいちいち見てられないだろうから、誰かに聞かれたら、今言ったような感じで説明してあげてね。
H:はい!
S:あと、もう1点、重要なことがあるんだ。宅建士からハウスクリーニング費用の説明は受けてる?
H:いえ、契約を更新する場合の話だから、わたしには関係ないって言われました。
S:…むむむ。これまでの話は、通常の使用による損耗の範囲内かどうかで、賃貸人がリスクヘッジすべき通常損耗・経年変化と、賃借人が原状回復義務を負う場合を振り分けるという話だったよね? 基本的にはその考えでいくわけだけど、(オ)。言ってる意味わかる?
H:…わかりません。
S:極端な話、入居後1週間で、急遽、転勤が決まって退去することになった場合、たった1週間住んだだけじゃ汚損なんてほとんどないよね。だから、さっきの振り分けで言ったら、通常の使用による損耗の範囲内に収まっているとして、賃借人は原状回復義務を負う必要がないってことになりそうでしょ? でも、この特約は、「汚損の程度の如何を問わず」なわけだから、こういう場合であっても、契約時にあらかじめ明示されたハウスクリーニング費用は発生するんですよっていう意味だ。
H:契約時に…明示あったかなぁ…もう覚えてないです。
S:あ、重要事項説明書の費用欄に書いてあるじゃん。61,000円だって。
H:それって、更新する場合の話って…
S:違う。たとえ事情により入居後1ヵ月で退去することになった場合であっても、2年後の契約満了の時点ですべての汚損が通常損耗・経年変化のレベルに収まっていた場合であっても、常にこの61,000円の支払いは発生しますっていう特約なんだよ。実際どうなるかっていうと、今回の契約では契約時の敷金の差入れはないみたいだけど、もし月額賃料の2ヵ月分の敷金の差入れがあったなら、敷金(月額賃料120,000円×2ヵ月分)-(退去時までに未払いの賃料等+ハウスクリーニング費用(61,000円)+退去時の原状回復費用+その他賃貸人に対して負担する金銭債務の額)=退去時に返還される敷金の額ということになるんだよ。賃料等をきちんと支払期日までに支払っていて、退去の時点での汚損も丁寧に使っていたから通常損耗・経年変化の範囲内で、設備を壊した等による損害賠償債務もない場合であっても、ハウスクリーニング費用は敷金から控除されちゃうから、179,000円しか返してもらえないってことになるね。
H:ええ!! 全然違うじゃないですか!!
S:…うん。でも、Hさんの場合は不幸中の幸いというか、ルームクリーニング料金っていう費目と、その金額の明示はあるよね。だから、費用総額がどの程度になるかをイメージできる。でも、稀にではあるけど、契約書類のどこを探してもルームクリーニング料金とか、これに相当する別の名前の料金とかの記載がないことがあったりする。
H:ええ!! それじゃ、後でいくら請求されるかわかんないですね!
S:レピュテーションリスクもあるから、そこまで不動産事業者が酷いことをできるかはわからないけど、うちのお客様には、念のため、そこまで説明しておくつもりだから、あなたもきちんと説明できるようにしておいてね。
H:はい!
S:1つ宿題を出しておくよ。はい、今日のお土産♪ あなたには、どこに出しても恥ずかしくない立派なAGIになってもらいたいから、私もきちんと作問したよ。
H:う……は、はい…。
S:知識の量もある程度は必要だけど、生成AIの台頭によって正解の価値が逓減しつつある今日の状況下においては、知識の有無だけでは解決できない未知の社会的課題への対応力のほうがもっと重要だ。あと、自走能力を身につけてもらいたい。自らの知識量を増やしたり、自分の考えを他者も理解可能な形に組み立てて表明できるようになるためには、論理的思考力も重要になってくる。そういう観点から作問しておいたからね♪ じゃ、関内で遊んでくるね♪ エヘ♪ エヘ♪
H:お疲れさまでした!
A:ただ、保証会社を利用するってことは、そこに保証会社利用料っていう費用が発生するんだ。その請求方法としては、初回保証料として月額賃料等の何割かの費用が発生した後、1年おきに1万円くらい請求されるっていうパターンと、所定の計算式で算定された金額が毎月の賃料等としてまとめて引き落とされるっていうパターンがある
B:物件の内部でタバコを吸い続けたせいで、退去時には部屋中がヤニで黄ばんでしまっていたという場合とか、エアコンからの水漏れに気づいていながら放置したせいで壁がカビだらけになってしまった場合とかはどうだろう
C:多くの場合、賃貸借契約にはハウスクリーニングの特約がついていて、入居期間や汚損の程度の如何を問わず、ハウスクリーニング料金として一定額を支払うことになっているんだ。
D:火災保険の加入のためにどんな手続が必要になるかも物件の管理会社によって違うんだ。保険会社との間で保険加入契約を締結するケースが多いけど、今回のHさんの契約では、ヤマトさんが指定した⑤ラビング補償制度に加入することになってるから、火災保険も自動付帯されて、別途、火災保険の手続をする必要がなかったということだね
E:家を借りる際は、賃貸借契約の全期間を通じて、保証会社の利用と火災保険への加入がほぼ必須になるんだ。保証会社の利用については、保証会社と保証委託契約を締結するとともに、決済会社との間で立替払契約を締結して引落口座を登録することになる。その方法は管理会社によって違っていたりするけどね
1 アにE、オにC
2 イにB、ウにC
3 ウにA、エにD
4 エにD、オにE
5 オにE、アにB