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法令上の制限と宅建業者の調査説明義務!

1 せっかく建てた新築戸建てが取壊し!? 道路計画に係る土地売買契約と媒介業者の説明義務!|東京地判平成20年10月24日改題【宅建士法定講習】

問 アパレルブランドを経営するXは、自宅兼アトリエとして使用するため、宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」という。)Aとの間で、2025年5月15日、宅建業者Yの媒介により、東京都豊島区内の新築戸建て住宅(以下、「本件物件」という。)を、売買代金1億5,000万円で購入する契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。豊島区は同区の主要生活道路計画(以下、「本件道路計画」という。)に係る土地において建物を新築する際は、本件道路計画に沿った形でセットバックするよう指導してきたところ、本件物件の土地の一部も本件道路計画上の道路予定地となっていた。しかし、Aは豊島区の指導を無視して本件建物を建築したうえで販売を開始し、これにXが申込んだのが本件である。
Yの宅地建物取引士Bは、本件契約に係る重要事項説明の際、「北東側公道にて生活主要道路10m(幅員)があります。」と記載された重要事項説明書をXに交付しているものの、本件道路計画について、それ以上の具体的な説明はしていない。2025年11月20日、Xが豊島区に問い合わせたところ、本件物件の一部が本件道路計画上の道路予定地となっており、法的拘束力はないものの、仮に本件道路計画が事業化されれば、本件物件の土地の収用と建物の一部の取壊しが予想されるという回答を得た。Xは、宅建業者Yに対して、説明義務違反を理由として損害賠償請求することを検討している。
この事案に関する以下の記述のうち、民法、宅地建物取引業法及び裁判例に照らし、正しいものはどれか。

1 豊島区はAに対して本件道路計画に即したセットバックを指導しているが、Aが行政指導に従うかどうかはAが任意に決められる事柄である。しかし、本件道路計画には法的拘束力があるため、将来における本件土地の一部の収用や本件建物の一部取壊しの具体的可能性があったといえる。したがって、Yには説明義務違反が認められる。
2 豊島区はAに対して本件道路計画に即したセットバックを指導しているが、Aが行政指導に従うかどうかはAが任意に決められる事柄である。Aが行政指導に従わなかった結果、本件道路計画を阻害する建物が現出することとなったが、本件契約の締結時点では、将来における本件土地の一部の収用や本件建物の一部取壊しの抽象的可能性があったにすぎない。したがって、Yには説明義務違反は認められない。
3 行政指導の法的性格はともかくとして、実際問題としては、宅建業者たるAは、豊島区の指導に従った建物を建築すべきであった。Aが行政指導に従わなかった結果、本件道路計画を阻害する建物が現出することになった場合、もはや後には引けないことから、Yとしては、重要事項説明書には「北東側公道にて生活主要道路10m(幅員)があります。」とだけ記載したうえで、本件道路計画が事業化されないことを祈るべきであって、お祈り中にXが事を荒立てたとしても、まだ事業化されると決まったわけではないのであるから、Yには説明義務違反は認められない。
4 行政指導の法的性格はともかくとして、実際問題としては、宅建業者たるAは、豊島区の指導に従った建物を建築すべきであった。Aが行政指導に従わなかった結果、本件道路計画を阻害する建物が現出することになった場合、当該物件は、たとえ本件道路計画の事業化が不透明であっても、契約時点において、将来における本件土地の一部の収用や本件建物の一部取壊しの具体的可能性という重要な瑕疵を孕むものとして存在している。したがって、これを説明しなかったYには説明義務違反が認められる。
5 本件物件は、契約時点において、将来における本件土地の一部の収用や本件建物の一部取壊しの具体的可能性という重要な瑕疵を孕むものとして存在している。したがって、これを説明しなかったYには説明義務違反が認められる。しかし、将来、本件道路計画が事業化されたとしても、本件土地の公用収用に伴いXに補償金が支払われるであろうから、Xには何ら損害は発生しないため、結局、Xの請求は棄却される見込みである。

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