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フリーランス法上のハラスメント防止措置とは?|相談窓口の設置と事後対応をクイズで解説【2024年11月施行】

2025-12-30

1 広告代理店の事例で学ぶフリーランス法上のハラスメント防止体制の具体的内容!

問 Webデザイン業を営むA(従業員を使用していないものとする。)は、広告代理店B社(従業員1,000名を使用しているものとする。)から、B社のクライアントである大手食品メーカーD社のブランドサイトのリニューアル業務を、報酬総額240万円、納期6ヵ月の条件で依頼された(以下「本件委託」という。)。
本件委託の遂行中、B社のクリエイティブ部門につき発注権限を有する制作部長Cは、Aに対し、連日深夜に至るまでMicrosoft Teamsで執拗に連絡を繰り返し、Aが休息のために返信を数時間遅らせただけで「代わりはいくらでもいるんだぞ!」、「この程度のレスポンスでプロを名乗るな!」等といったメッセージを送信した。また、D社の宣伝部長Eも、Aが同席したオンライン会議において、Aの提案に対し、「これだから三流美大卒はセンスがない。」とAの人格や経歴を否定する発言を繰り返し、Cもこれに同調した。さらに、CはAに対し、本件業務とは無関係な自らの個人的なSNSアカウントの運用や私的な買い物の代行まで「今後の発注に向けたテスト」と称して休日に強要したほか、納品物の検収の際も、具体的な修正指示書を作成しないまま、「直感的に美味しそうに見えない」、「もっとバズる感じに」といった抽象的な理由で20回以上に及ぶ細かな修正と再提出を命じ、最終的には「納品物のクオリティが当初の期待に満たない」として、Aへの報酬支払いも一方的に拒絶した。
この事案におけるB社の対応に関する以下の記述のうち、フリーランス法に照らし正しいものはどれか。

1 B社は、本件委託に先立ち、業務委託においてハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化しておかなければならないが、社内報・研修等による周知の範囲は、本問におけるCのような業務委託に係る契約担当者や成果物の確認・検収を行う者といった、業務委託契約につき一定の権限を有する者に限られる。
2 B社は、ハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を定めておく必要があるが、B社の代表取締役Fが、全社員の前でその具体的内容を口頭で伝えたことがあるのであれば、就業規則その他の文書に規定していなくとも、Cを処分することにフリーランス法上の問題は生じない。
3 B社が設置すべき相談窓口については、フリーランスからの相談のみを受けつける専用の窓口を新たに設置しなければならない。したがって、既に設置されているB社の従業員向けのパワーハラスメント相談窓口等を活用してAからの申出に対応することは認められない。
4 業務委託におけるハラスメントに係る相談窓口の担当者が対応を求められるのは、ハラスメントが現に生じていることが客観的な証拠によって裏づけられた場合に限られる。本問において、Cによるハラスメントを裏づけ得る証拠がAによる陳述のみであり、他に客観的な証拠が何ら提出されていないときは、B社の窓口担当者Gは、Aからの相談の申出への対応を拒否できる。
5 Aからハラスメントに係る相談があった場合、B社の窓口担当者Hとしては、AC双方から事情を聴取したうえで、事実関係の迅速な把握に努める必要があり、AC間で主張に不一致があるときは、AC以外の第三者からも事情を聴取する等の措置を講じなければならない。そして、事実確認ができたときは、ACの関係改善に向けた援助、Aの就業場所の変更あるいはCの配置転換、Cに対する謝罪要求や懲戒処分、Aの不利益の回復やメンタルケア等といった措置を講じなければならない。

2 広告業界の商習慣とフリーランス法!「措置義務」と「望ましい対応」を区別しよう!

問 Webデザイン業を営むA(従業員を使用していないものとする。)は、広告代理店B社(従業員1,000名を使用しているものとする。)から、B社のクライアントである大手食品メーカーD社のブランドサイトのリニューアル業務を、報酬総額240万円、納期6ヵ月の条件で依頼された(以下「本件委託」という。)。
本件委託の遂行中、B社のクリエイティブ部門につき発注権限を有する制作部長Cは、Aに対し、連日深夜に至るまでMicrosoft Teamsで執拗に連絡を繰り返し、Aが休息のために返信を数時間遅らせただけで「代わりはいくらでもいるんだぞ!」、「この程度のレスポンスでプロを名乗るな!」等といったメッセージを送信した。また、D社の宣伝部長Eも、Aが同席したオンライン会議において、Aの提案に対し「チミ、意外とスタイルいいよね。 (;´Д`)ハァハァ」、「かわいい顔して、意外とトコジョーズなんじゃないの? (/ω\)イヤ~ン」等といった業務に無関係な性的な言動を繰り返し、Cもこれを制止することなく、「クライアントの誘いを受けるのも仕事のうちだ。」とAを追い込んだ。さらに、CはAに対して自身も同席すると伝えておきながら、Eとの個室料亭での打ち合わせをドタキャンして、AがEと2人きりで会食するよう仕向けた。この打ち合わせの夜にEから性被害を受けたAは、都道府県労働局に被害を申出たが、ほどなくしてB社から、「納品物のクオリティが当初の期待に満たない」として本件委託を即時解除された。
この事案におけるB社の対応に関する以下の記述のうち、フリーランス法に照らし正しいものはどれか。

1 B社が、Aによる性被害の申出を理由として本件委託を即時解除したことは、フリーランス法が禁じる不利益取扱いの禁止に抵触する。これを特に重大かつ悪質と判断した厚生労働大臣は、B社に対し、是正勧告の手続を経ることなく、直ちに、B社の社名及びAの申出の内容を公表することができる。
2 AはD社の宣伝部長Eから深刻なセクシュアルハラスメントを受けているが、EはB社以外の第三者である。したがって、B社としては、Cによるハラスメントについては、AC双方から事情を聴取して事実関係の把握に努める義務はあるものの、Eによるハラスメントについては、D社に対して事実関係の把握や再発防止に向けた協力を求める必要はない。
3 B社は、本件サイトの公開後に、一般消費者からSNS等を通じて「デザインが不適切だ」等といった執拗な誹謗中傷を受けたり、Aの個人情報が晒される等のカスタマーハラスメントを受ける事態に備え、業務委託契約の締結に先立ち、相談窓口Fを定めたうえでこれをAに通知しておくとともに、ハラスメント発生後にFがAの状況に応じて適切に対応できる体制を整えておくことが望ましい。
4 本件委託において、B社がシステム開発の一部をソフトウェア開発会社G社に再委託しており、G社の従業員HAと協力して同じ現場で就業していた場合、ハラスメント防止に向けた体制整備はあくまでも事業者ごとに行うべきものであるから、Hによるハラスメントについては、B社との関係ではフリーランス法上の問題が生じる余地はない。
5 フリーランス法は、ハラスメント行為自体を直接規制するのではなく、業務委託契約の締結を前提として、特定業務委託事業者に対して、ハラスメントの発生防止に向けた体制整備義務を負わせることを通じて間接的にハラスメント行為を規制するものである。したがって、本件委託成立前の交渉段階におけるCのハラスメント行為については、フリーランス法上の問題が生じる余地はない。

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