
ボクの痛みをわかってくれる先生を連れてきて!――カルテの改竄を見抜ける協力医を確保できますか?
問 地元で長らく愛されてきた和菓子店を経営するXは、かわいがっていた看板猫のダイフク(茶トラのスコティッシュフォールドのオス 8歳)の元気がなくなったことから、蒼天動物病院にダイフクを連れて行った。しかし、同動物病院の獣医Yの治療の甲斐なく、ほどなくしてダイフクは死亡してしまった。ダイフクに対する診療行為に疑問を抱いたXは、Yに対する損害賠償請求に向けて準備を開始したが、ダイフクの容態急変時の詳細なモニター記録や、Yが実施しなかった検査の代替的判断の根拠となるデータはすべて同動物病院内にあり、Xは自身の主張を裏づけるための客観証拠の入手に苦慮している。この事案に関する以下の記述のうち、正しいものはどれか。
1 蒼天動物病院におけるダイフクの診療記録がXの個人情報に該当するとしても、同動物病院が管理している個人情報がせいぜい500人分にとどまるのであれば、Yは個人情報保護法上の個人情報取扱事業者に該当しない。したがって、XはYに対して、保有個人データの開示請求権を根拠として診療記録の開示を求めることはできない。
2 Xが裁判所にダイフクに係る診療記録の証拠保全を申し立てる場合、証拠保全の実効性を担保するためにはYの事前準備が重要となることから、裁判所に対する証拠保全の申立てと同時に、Yに対して、証拠保全の対象物の概要に加え、デジタル・フォレンジックの観点から、電磁的記録(デジタルカルテ)については更新履歴がわかる形式で出力できるようにしておくべき旨を通知しなければならない。
3 Xが証拠保全手続を実施してカルテ等を入手したものの、内容を精査した結果、現時点での勝訴は困難と判断してYに対する本案訴訟の提起を断念した場合、証拠保全に要した司法資源を徒労に帰せしめたことに対する制裁として、訴えの取下げの再訴禁止効に準じて、同一事情の下では、Xは再度、裁判所に証拠保全を申し立てることができなくなる。
4 XY間において、調停・あっせん・仲裁といった裁判外紛争解決手続(ADR)によっても解決に至らなかった場合、Xとしては訴訟を提起せざるを得なくなるが、ペットをめぐる紛争は感情的な対立が深くなりがちであり、また、獣医学的知見も要する等事案が複雑化することから、Xの請求額が140万円以下であるかどうかにかかわらず、事物管轄は常に地方裁判所となる。
5 XがYの善管注意義務違反を理由とする損害賠償請求訴訟を見据えている場合、審理ではYの診察・処置が診察当時の臨床医学の基準に照らして妥当であったかが主要な争点となる。それゆえ、Xにとっては、Yから開示を受けたカルテ等の問題点を専門的視点から指摘できる協力医を確保できるか、また、その指摘を裏づける医学的エビデンス(学術論文等)が存在するかが重要な要素となる。