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「役所で確認済み」は真っ赤な嘘だったの!? 媒介業者を信じて消えた1,555万円と建売事業の利益!

1 東京地判平成30年9月27日改題【宅建士法定講習】

問 宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」という。)Xは、戸建住宅の建売事業のため、2021年4月26日、宅建業者Yの媒介により、売主Aとの間で、東京都豊島区内の土地(以下、「本件土地」という。)を、売買代金7,300万円で購入する売買契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。本件土地は、建築基準法42条2項道路に接しているため、建物建築の際は当該道路の中心線から2mの位置までセットバックする必要があったが、そのためには既存の擁壁を取り壊したうえで、あらためて、セットバックラインに沿って擁壁を築造し直す必要があった。当初、本件契約に係る重要事項説明書と売買契約書のドラフトには、擁壁の築造にかかる費用を買主負担とする旨の記載があったが、Xがそのような条件では契約できないと述べたところ、YはAの了承のもと、当該記載を削除したうえで、擁壁工事をしなくとも建物の建築が可能であることを役所で確認できたと説明した。その結果、本件契約の締結に至ったものである。しかし、本件契約の成立後、Xが一級建築士に擁壁の再築の要否の調査を依頼したところ、やはり本件土地上に建物を建築するためには擁壁の再築が不可避であるとの回答を得た。Xは、Yに対して、媒介契約上の債務不履行又は不法行為を理由として、約1,555万円の損害賠償を求めて提訴した。
この事案に関する以下の記述のうち、正しいものはどれか。

1 買主Xは宅建業者であるから、本件契約を媒介した宅建業者Yは、宅建士をして重要事項説明をさせる必要がないし、宅建業者であれば、本件土地を契約目的に沿って利用するためには擁壁の再築が必要であることは容易に知り得たのであるから、Yには媒介契約上の債務不履行も不法行為法上の一般的注意義務違反もない。
2 YはXの意向に沿う形で、本件契約に係る重要事項説明書と売買契約書のドラフトから費用負担に係る記載を削除しているが、本件土地上に建物を建築するためにはセットバックが必要である旨の記載は残っていたのであるから、Yには媒介契約上の債務不履行も不法行為法上の一般的注意義務違反もない。
3 Yは、媒介契約に基づいて、Xに対して、本件土地上に建物を新築するためには既存の擁壁を取り壊したうえで新たにセットバックラインに沿って擁壁を築造し直す必要があることを説明する義務を負っていた。しかるに、Yは、Xに対して、既存の擁壁を取り壊さなくとも建物の建築が可能であることを役所で確認した旨の事実と異なる説明をしているのであるから、媒介契約上の債務不履行責任を負う。もっとも、Xの損害は、本件土地の更地価格から旧建物の撤去費用及び擁壁工事費用を控除して得た適正価格と売買代金の差額に相当する金額等に限られる。
4 Yは、媒介契約に基づいて、Xに対して、本件土地上に建物を新築するためには既存の擁壁を取り壊したうえで新たにセットバックラインに沿って擁壁を築造し直す必要があることを説明する義務を負っていた。しかるに、Yは、Xに対して、既存の擁壁を取り壊さなくとも建物の建築が可能であることを役所で確認した旨の事実と異なる説明をしているのであるから、媒介契約上の債務不履行責任を負う。そして、Xが実施を余儀なくされた擁壁再築に係る工事費用1,414万8,000円全額がXの損害となる。
5 媒介業者Yの業務上の注意義務違反によって買主Xが損害を被った場合であっても、YのXに対する媒介報酬の請求は、媒介契約上の債務の履行とは別個の問題であるから、YはXに対して媒介報酬を請求できるとしたうえで、XのYに対する損害賠償請求権と相殺することになる。

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