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1 東京地判平成24年5月31日改題【宅建士法定講習】
問 非破壊検査事業を営むXは、宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」という。)Aとの間で、1998年9月9日、宅建業者Yの媒介により、東京都目黒区内にある7区画に分割された分譲地のうち1区画(以下、「本件物件」という。)を、売買代金3,870万円で購入する契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。
本件契約に係る重要事項説明書及び売買契約書には、地盤補強工事等については、「本件物件における建物の建築の際は、地盤補強工事等が必要となる場合があり、その費用は買主の負担とする。」と、条例上の制限については、「本件物件は、東京都建築安全条例6条の制限を受ける場合があります。」との記載があった。XがYの事務所での重要事項説明の際にこれらについて質問したところ、Yの専任宅建士Bは、地盤補強工事等については、「大丈夫です、工事は必要ありません。」と答えた。また、Bは条例上の制限についても、「たぶん大丈夫です。」と答えたものの、正確なところはわからないため、Aに問い合わせて欲しい旨回答した。そこで、XがAに問い合わせたところ、「仮にがけ条例の適用があるとしても、問題なく対応可能です。」との回答を得た。
Bによる重要事項説明を経て、建物の建築にかかるおおよその費用がわかってひと安心したXは、本件契約書に記名押印した。しかし、不安に駆られたXが、念のため、一級建築士Cにも相談してみたところ、本件物件は地盤が軟弱であるため地盤補強工事として777万円の追加費用が発生するとの回答を得た。また、条例上の制限についても、がけ条例の適用により木造建物の建築はできず、鉄筋コンクリート造とするためには833万円の追加費用が発生するとのことであった。Xは、宅建業者Yに対して、説明義務違反を理由とする損害賠償請求をしようと考えている。
この事案に関する以下の記述のうち、民法、宅地建物取引業法及び裁判例に照らし、正しいものはどれか。
1 地盤補強工事等についても、条例上の制限についても、本件契約に係る重要事項説明書には、Xに追加費用が発生する「場合があります」と記載されているのであるから、Yには何ら説明義務違反は認められない。
2 重要事項説明書に記載された内容と異なる説明を口頭で行ったことを理由として宅建業者の法的責任を認めれば、以後、宅建士はリスクを怖れて重要事項説明書の棒読みしかしなくなるであろうから、Yには説明義務違反は認められない。
3 たとえ重要事項説明書に「地盤補強工事等が必要となる場合があり、その費用は買主の負担とする。」と記載されていても、Xとしては、建物建築に必要な費用の総額の目安を求めているのであるから、工事不要と断定したYは、本件契約の付随義務としての説明義務に違反したといえる。
4 たとえ重要事項説明書に「東京都建築安全条例6条の制限を受ける場合があります。」と記載されていても、ABらの口頭での説明は、かえって、がけ条例が適用されるかどうかは建築費総額に影響しないとの誤解を生じさせるものであり、AB両名は、本件契約の付随義務としての説明義務に違反したといえる。
5 たとえ重要事項説明書に「東京都建築安全条例6条の制限を受ける場合があります。」と記載されていても、ABらの口頭での説明は、かえって、がけ条例が適用されるかどうかは建築費総額に影響しないとの誤解を生じさせるものであり、AB両名は、不法行為法上の一般的注意義務に違反したといえる。
2 駐車場2台って書いてあったじゃん!? 収益性を揺るがす窓先空地の調査・説明義務|東京地判平成30年7月11日改題【宅建士法定講習】
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問 外資系メーカー勤務のXは、将来にわたり賃料収入を得ることを目的として、宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」という。)Aとの間で、2025年12月20日、宅建業者Yの媒介により、東京都豊島区内の土地建物(以下、「本件物件」という。)を、売買代金1億5千万円で購入する契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。Yの宅地建物取引士Bは、本件契約に係る重要事項説明の際、本件建物は4室であり、その前面には2台分の駐車スペースがあると説明していた。しかし、2026年1月10日、本件土地の一部が東京都建築安全条例が定める窓先空地にあたることが判明したことで、Xは駐車場については1台分の賃料収入しか得ることができなくなった。Xは、宅建業者Yに対して、不正確な情報を提供して本件契約を締結させたとして、不法行為に基づく損害賠償請求をしようと考えている。
この事案に関する以下の記述のうち、民法、宅地建物取引業法及び裁判例に照らし、正しいものはどれか。なお、本件建物の設計・建築はAが行っている。
1 Xの購入動機が収益物件化にあることをYが知り得たとしても、Yとしては、Aが作成した販売広告の内容を前提としてXに説明しなければならない立場にある以上、駐車可能台数を自ら調査する義務までは負わない。
2 本件物件を設計・建築する過程において、本件物件の駐車場部分の一部が都条例の窓先空地にあたることを認識し得たにもかかわらず、2台分の駐車場収入を得られる旨を記載した販売広告を作成し、これをYに提供したAは、Xとの関係で不法行為責任を負う。
3 宅建業者Yは、収益物件の売買契約の媒介に際して、本件物件に係る法令上の制限について、誤解を生じさせる記載を含む広告を使用しないようにするという意味での注意義務を負うが、それ以上に、実際の駐車可能台数が何台かまで独自に調査する義務までは負わない。
4 宅建業者Yは、収益物件の売買契約の媒介に際して、本件物件に係る法令上の制限について、誤解を生じさせる記載を含む広告を使用しないだけでなく、当該物件の収益性に関する記載の正確性について調査すべき注意義務を負う。したがって、実際の収益力が募集広告の表示を下回るのであれば、売買代金額に収益力の低下割合を乗じて得た金額の損害がXに生じているので、XはYに対してその賠償も請求することができる。
5 宅建業者Yは、収益物件の売買契約の媒介に際して、本件物件に係る法令上の制限について、誤解を生じさせる記載を含む広告を使用しないだけでなく、当該物件の収益性に関する記載の正確性について調査すべき注意義務を負う。したがって、かかるYと媒介契約を締結したXは、Yの調査義務違反を理由として、債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。