Copyright Issues

“ジブリ風”AI画像は著作権侵害?生成AI時代の創作と法的リスクを考える

2025-06-02

Expertise,Authoritativeness,and DX

岩田 崇一郎
申請取次行政書士
神奈川県行政書士会著作権相談員
生成AIパスポート保有
DX推進パスポート2
2012年度司法試験合格(知的財産法選択)

SNSで拡散する“ジブリ風”AI画像の現状

最近、ChatGPTや画像生成AI(例:Midjourney、Stable Diffusion)を活用して「ジブリ風」の画像を生成し、SNSに投稿することが一種のトレンドとなっています。「この画像をジブリ風にして」というシンプルなプロンプトにより、懐かしい色使いや柔らかいタッチを持ったビジュアルが生成され、多くのユーザーの関心を集めています。

X(旧Twitter)やInstagramでは、「#ジブリ風AI」「#AIイラスト」といったタグが付けられた投稿が大量に流通し、「まるで本物のスタジオジブリ作品みたい」「映画のワンシーンのようだ」といった賞賛のコメントが寄せられています。一方で、「これは著作権的に大丈夫なのか?」という疑問の声も見られます。

こうしたAIと著作権の交錯する創作行為は今後ますます拡大が予想されるため、その法的・倫理的側面を理解しておくことが重要です。

著作権法の基本:アイデアと表現の違い

著作権法では、「アイデア」そのものは保護されず、「表現」された創作物のみが対象になります。例えば「田舎の自然豊かな村に住む不思議な生き物と子どもの交流」というコンセプト自体は自由に使えますが、それをスタジオジブリのような独特のタッチや構図、色使いで描いた「具体的な絵」は著作権の対象です。

AIが生成する「ジブリ風」画像は、この表現の模倣に近く、たとえば「トトロ」「カオナシ」などの特徴を強く意識したビジュアルであれば、著作権侵害に該当する可能性があります。また、スタイルの模倣であっても、ジブリ特有の色調や背景表現があまりに類似する場合、「著作物の同一性保持権(同一性保持権)」や「同一性のある複製」とみなされることもあります。

アイデアと表現の境界は曖昧なことが多く、AIによる創作では特に判断が難しい領域です。

Legal Viewpoint

抽象的なコンセプトはアイデアの領域にとどまるから著作権法で保護されないけれど、アイデアを具体的に表現したイラストは著作物として保護されるということに一応なりますが、これは言うは易しで、実際にはアイデアと表現の区別が難しい場合が多いです。

「田舎の自然豊かな村に住む不思議な生き物と子どもの交流」というコンセプトでイラストを描くとしたら、あなたはどんなイラストを描きますか?

ある人はスタジオジブリの作風に近い形に仕上げるかもしれません。でも、別の人は不思議な生き物を怪獣に近いイメージで描くかもしれません。

では、その違いはどこから生じたかというと、各イラストにはその創作者の個性が表現されていると考えるんです。

各イラストの作者は、育った環境もこれまでの経歴も違いますから、考え方も感じ方も違って当然です。

そういった各人の個性がイラストに反映されていると考えるからこそ、イラストを著作物として扱い、著作者の才能にフリーライドした人物に対する差止めや損害賠償請求といった法的保護を与えているんです。

アイデアは同じであっても、人によって描き方が違います。いろんな人がいろんなイラストを描ける世の中だからこそ、多くの著作物が生まれますし、自ら描いた作品に独占権が認められることは創作活動へのインセンティブになります。こうして文化が発展していくのだと考えるわけです。

憲法論的に言えば、まさに表現の自由の行使であり(憲法21条1項)、その背後には個人の尊厳という我が国の憲法が目指す最高の価値があります(憲法13条前段)。もし公権力が私人による創作活動を正当な理由なく制約すれば憲法訴訟にもなり得るところです。

冒頭のコンセプトでイラストを描こうとするたびに発案者から許可を得なければならないとしたら、多くの著作物が生まれるでしょうか?

ゆえに、アイデアには独占権を認めないけれど、表現の創作者には独占権を認めるということです。なお、特許権はアイデアに独占権を認めますが、あれは先行者利益を得させるためです。

“ジブリ風”画像の法的リスク

AIによって生成された“ジブリ風”画像には、法的リスクがいくつか存在します。特に危険なのは、ジブリ作品の特定キャラクターや背景、色彩設計などを明確に模倣している場合です。例えば、トトロのシルエットや、千と千尋の神隠しに登場する湯屋のような建築物が描かれている場合、それはジブリ作品の「表現」を直接参照していると判断される可能性があります。

また、ファンアート的な立場であっても、商用利用や拡散力のあるSNSでの公開によって「黙認されていた範囲」を逸脱するケースがあります。実際にスタジオジブリは、自社作品の利用について非常に厳格なスタンスを持っており、キャラクターの無断使用に対しては過去にも警告を出した事例があります。

このように、AIによる「似せた表現」でも、具体的な要素が含まれている場合は著作権侵害となる恐れが高いため、注意が必要です。

Legal Viewpoint

先ほどはアイデアは共通でしたが、それに基づいて描かれたイラストは、雰囲気は似ているけれど別のイラストでした。異なる個性の持ち主が描けば、出来上がったイラストも異なっているのが自然です。

では、出来上がったイラストが極めて類似している場合はどうでしょうか?偶然の一致であれば、いずれのイラストもその作者の個性の反映ですから、著作権侵害にはなりません。

とはいえ、SNSでは炎上するかもしれませんし、企業としてもレピュテーションリスクの観点から後発のイラストの使用を控えるかもしれません。ただ、それはあくまでも事実上の措置であって、法的には著作権侵害ではありません。

では、左のイラストが本当にスタジオジブリの作品だったらどうでしょうか?既に多くの人に知られているはずですよね。右のイラストの作者も知っていたんじゃないか、つまり、パクったんじゃないかという疑念が生じますよね。

もし右のイラストの作者が左のイラストを模倣して描いたのなら、右の作品はアイデアをもとに作者がその個性を発揮して創作したのではなく、既存のスタジオジブリの作品に依拠し、ジブリスタッフらの才能・個性にフリーライドして描かれただけということになります。

2つのイラストが類似していること、あるいは、その程度のことを②類似性といいます。類似性が問題になった時点で、事実上、炎上リスクが生じます。さらに、右のイラストの作者が自らの個性を発揮することなく、スタジオジブリの才能・個性を拝借していたことを①依拠性といいます。①依拠性②類似性の双方が認められてはじめて、法律上、著作権侵害(複製権侵害)ということになります。

AI生成物の著作権と利用者の責任

AIが自動で生成した画像やテキストには、誰が著作権を持つのかという問題が存在します。現行の日本の著作権法では、著作権の主体は「人間」である必要があり、機械が創作者として著作権を取得することはありません。そのため、AI生成物は著作物として認められないか、またはAIを使った人間(プロンプト入力者)に帰属するかという状況です。

しかし、たとえ著作物として認められなかったとしても、生成物の使用には責任が伴います。もし生成された画像が第三者の著作物を無断で模倣していた場合、それを公開・販売した利用者が著作権侵害の責任を問われる可能性があります。

つまり、「AIが作ったからセーフ」という考えは通用せず、AIを使う人間が最終的な責任を負うという認識が重要です。

Legal Viewpoint

この段落では、①AIで生成した画像の著作物性(画像右上の男性が著作権者になれるか?という問題)と、②生成した画像が既存の作品の著作権を侵害する場合(右上のAI絵師が生成した画像が左下の画像を創作したスタジオの著作権を侵害するか?という問題)という2つの話をしています。

まず1点目ですが、人が描いたイラストであれば、その人の個性が発揮されていると認められる限り(創作性)、その人が著作者として著作権を取得します。ここでの創作性は、幼稚園児が描いたイラストであっても認められ得るくらい低いハードルです。

これに対して、人間が入力したプロンプトをもとに機械がイラストを生成した場合、機械が人としての個性を発揮することはできませんから、機械自体が著作者として著作権を取得することはありません。

せいぜい、機械をツールとして使用し、プロンプトエンジニアリングやハイパーパラメータの調整等に創意工夫を凝らした人間が著作者となり得るにとどまります。余談ですが、最近、特許権の裁判でも発明者になれるのは人であって機械ではないという判断が示されていましたね。

次に2点目については、以前、BlueSkyでもご紹介した文化庁の『AI と著作権に関する考え方について』の記述をご紹介します。お持ちの方は、同資料のp.33~35をご覧ください。

まず、類似性判断については、人間がイラストを描いた場合と同様に考える、つまり、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる場合に類似性が肯定されます。

次に、依拠性判断については、人間がイラストを描いた場合とは状況が異なるとしています。AIによるイラスト生成の場合、AI絵師によるプロンプト入力に先立ち、既存の作品を大量にAIに学習させてモデルを制作しています。そこで、場合を分けて考えることにしています。

(✨ここは難しいので、実際に著作権侵害で訴えられてしまった人くらいしか真剣に読まないんだろうなって思いながら作っています。さしあたり、AI絵師が先行作品を知りつつ生成した場合や、先行作品がAIの機械学習の際の学習用データセットに含まれていた場合、AI絵師としては、そうでない場合よりも苦しくなるというイメージを持っておきましょう。)

まず、AI絵師が先行作品の存在を認識していた場合、たとえば、先行作品を生成AIにインプットしたうえで「この画像みたいな画像を作って」で生成した場合や、「ナウシカの画像を作って」みたいなプロンプトで生成した場合、原作者側は、生成画像の❶高度の類似性や❷AI絵師の原作へのアクセス可能性を立証することによって、依拠性の推認を受けることができるとしています。

次に、AI絵師は先行作品を知らなかったけれど、モデルの学習データには先行作品が含まれていた場合、学習データに先行作品が含まれていることをもって客観的アクセス可能性があると認められ、❶類似性の立証さえできれば、AI絵師において、学習データの創作的表現が出力されない仕組みになっているとの法的評価を基礎づける具体的事実を立証しない限り、依拠性が推認されるとしています。

最後に、AI絵師が先行作品を知らなかっただけでなく、モデルの学習データにも先行作品が含まれていなかった場合は、たとえ生成された画像が先行作品に類似していたとしても偶然の一致にすぎず、依拠性は認められない、つまり、著作権侵害とならないとしています。

まとめ:創作と法のバランスを考える

生成AIの普及により、誰でも手軽に高品質な“ジブリ風”の画像を作れる時代が到来しました。しかし、その創造の自由には法的責任とリスクが伴います。ユーザー一人ひとりが著作権法についての正しい知識と倫理観を持つことがこれまで以上に重要です。

以下の点を意識することで、AI創作のリスクを最小限に抑えつつ、安全に楽しむことができます:

・著作物の模倣は避け、独自性を持たせる

・商用利用時は特に慎重に判断する

・他人の顔や社内資料など、機微な情報はAIに入力しない

・AIの利用規約やデータ利用方針を確認する

AIは創作の可能性を広げる強力なツールですが、そのパワーを正しく使うことが、次世代のクリエイティブ活動を守る鍵になります。

本サイトのコンテンツは、ChatGPTが生成したドラフトに岩田崇一郎が加筆その他の編集を加えて作成しています。
The content of this site is based on drafts generated by ChatGPT, with additional writing and editing by Soichiro Iwata.

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